『17歳だった!』(集英社)『あはははは』(幻冬舎):原田宗典
物語が好きな私でも、面白すぎて身の危険すら感じるエッセイはある。
原田宗典のエッセイは、実体験を語るギャグ漫画のようなものだ。
原田宗典の面白さは、『志村けんのバカ殿様』をみていた頃の感覚に似ている。
「おばかだなあ」と上から目線で呟いてみても、一度笑い始めたらもう止まらない。
そんな訳で、電車内での読書はオススメできない。
静かな車内に不気味な笑い声を響かせて、思いがけず戦慄のサスペンスを招きかねないからだ。
そもそもこの本の内容について多くを語らないのには訳がある。
『17歳だった!』も『あはははは』も数々の短編エッセイを集結して結び合わせたものだが、その中身はオゲレツなものばかり。
女の私が「うん○ょす」や「す○べ」について、憚ることなくゲラゲラ語ってみせたところで、人格破綻者の烙印を押されることになりかねない。
女というだけで用心しなくてはならないことは山ほどあるのだ。
まずひとつに、読んでいる間も笑いを堪えることに全神経を集中しすぎてしまわぬよう注意しなくてはならない。
最も、万が一にも鼻息を漏らしてしまえば、これまで築きあげてきた全てのものを失うはめになる。
たった一度の「ぶふっ」だけで、「百年の恋も冷めました」と悲劇的な結末を迎えることになるかもしれない。
『17歳だった!』の方はその機会が多いにあって、私はとうとう、ちびまる子ちゃんに出てくる野口さんのような笑い声で家族を震えあがらせてしまったが、自己弁護のために彼らに同じものを読ませたことは、我ながら賢明な判断であった。
間近に読んだ『あはははは』についてあげれば、「ビロウな話」「外人コワイのこと」のあたりで危うく、治りかけた傷跡をえぐりかけている。
そうは言っても、笑うことを恐れるべきではない。
今こそ笑いたい気分のあなたにも、笑顔になってほしいあの人にも、この本は大いに貢献してくれるだろう。
@ながれ