地底人とりゅう

「地底人とりゅう」は、日々の読書本を記録していくために開設した個人ブログです。書店では入手困難な古書の紹介もぽつぽつと投稿しております。

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『ゆめこ縮緬(角川文庫)』:皆川博子

皆川博子の物語に出てくる台詞は、いつも耳に心地よく、見ていて美しい。 活字が水面に浮かぶ落ち葉のように鉤括弧の外に揺れ動き、耳元でたしかに今、女の秘めやかな声が聞こえたような気がしてしまう。 ゆめこ縮緬 (角川文庫) 作者: 皆川博子 出版社/メー…

『ジェイン・エア(岩波文庫)』:シャーロット・ブロンテ

シャーロット・ブロンテの「ジェイン・エア」は、世界文学で最も有名な作品のひとつとして、何度も舞台化や映画化されてきた。 「ジェーン・エア」とも呼ばれる映画のひとつを私は見たことがあるが、当時は印象にも残らなかったのが事実だ。 だから原作小説…

『アースダイバー(講談社)』:中沢新一

中沢新一の新刊である「レンマ学」を読むことを潔く諦めた私に、親切で聡明な知人が中沢新一の著作物の中でも一番易しいと思われる哲学書として、「アースダイバー」という本を教えてくれた。 読んだからには感想を伝えなくてはいけない。 ところがいざどん…

『黄色い雨(河出書房新社)』:フリオリャマサーレス

本を開けばいつも主人公がいて、その主人公の行動や決断によって読者にカタルシスが生まれる。ところがこの一冊の本の内容を説明するには、主人公であるべき男の行動や決断が、あまりにも欠乏しすぎていた。にも関わらず、これまでにないほど印象的だと感じ…