地底人とりゅう

「地底人とりゅう」は、日々の読書本を記録していくために開設した個人ブログです。書店では入手困難な古書の紹介もぽつぽつと投稿しております。

2019-01-01から1年間の記事一覧

原作『風の谷のナウシカ(全7巻)』(徳間書店):宮崎駿

原作「風の谷のナウシカ」は、ジブリ作品の中でもとりわけ世界観が非常に細かく、宮崎駿が13年もの歳月をかけて完結した超大作の連載漫画です。 風の谷のナウシカ 全7巻箱入りセット「トルメキア戦役バージョン」 作者:宮崎 駿 出版社/メーカー: 徳間書店 …

『辺境図書館』『彗星図書館』(講談社):皆川博子

「本が好き。だけど、自分がどんな物語を、取りわけ愛おしく思えるのか分からない」 そんな人は案外多いのではないでしょうか。 私自身、2年前まで自分は特にミステリーが好きなのだと思い込んでいました。 名の知れたミステリー小説ばかりを読み漁り、好き…

『袋小路の男(講談社文庫)』 :絲山秋子

めちゃくちゃ面白い本を読んだあとに、これまたとんでもなく面白い本にすぐ手を伸ばすのは贅沢だ。 軽井沢で買ったりんごジャムをトーストの上に塗りたくり、その上からスライスしたほくほくの焼きりんごを重ねて食べるようなものである。 毎日の贅沢に疲れ…

『熱源(文藝春秋)』:川越宗一

本にもミステリ、ホラー、SF、ファンタジーと色々な類型がある中で、私が最も好きなのが、「熱」を持つ小説である。 その熱を必ずといって良いほど感じられるのが、歴史小説だ。 熱源 作者: 川越宗一 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2019/08/28 メディア…

『雲をつかむ話(講談社)』:多和田葉子

登場する人物の仕草や表情、風景描写があまりにも細かく鮮明で、私は読み始めてからすぐ、もしかしたらこれは事実なのかもしれない、と感じた。 あくまでフィクションとして出版されているこの本の、どこまでが現実で、どこからが幻想なのかわからない。 ま…

『ゆめこ縮緬(角川文庫)』:皆川博子

皆川博子の物語に出てくる台詞は、いつも耳に心地よく、見ていて美しい。 活字が水面に浮かぶ落ち葉のように鉤括弧の外に揺れ動き、耳元でたしかに今、女の秘めやかな声が聞こえたような気がしてしまう。 ゆめこ縮緬 (角川文庫) 作者: 皆川博子 出版社/メー…

『ジェイン・エア(岩波文庫)』:シャーロット・ブロンテ

シャーロット・ブロンテの「ジェイン・エア」は、世界文学で最も有名な作品のひとつとして、何度も舞台化や映画化されてきた。 「ジェーン・エア」とも呼ばれる映画のひとつを私は見たことがあるが、当時は印象にも残らなかったのが事実だ。 だから原作小説…

『アースダイバー(講談社)』:中沢新一

中沢新一の新刊である「レンマ学」を読むことを潔く諦めた私に、親切で聡明な知人が中沢新一の著作物の中でも一番易しいと思われる哲学書として、「アースダイバー」という本を教えてくれた。 読んだからには感想を伝えなくてはいけない。 ところがいざどん…

『黄色い雨(河出書房新社)』:フリオリャマサーレス

本を開けばいつも主人公がいて、その主人公の行動や決断によって読者にカタルシスが生まれる。ところがこの一冊の本の内容を説明するには、主人公であるべき男の行動や決断が、あまりにも欠乏しすぎていた。にも関わらず、これまでにないほど印象的だと感じ…

『イノセント・デイズ(新潮文庫)』:早見和真

「死にたい」と、たしかにそう聞こえた。帰宅途中のホームのベンチで、私は携帯のLINE画面から視線をあげる。それがすぐ隣でもたれるように座っていた女性の声だと気付くと、私はそのぽっかりと開いた空洞のような瞳に釘付けになった。地下鉄の蛍光灯の…

『誘拐(筑摩書房)』:本田靖春

こんにちは、ながれです。 みなさんは、戦後最大の誘拐事件「吉展ちゃん事件」の全貌をどれほどご存知でしょうか。 正直なところ、平成生まれの私はこの事件のことをほとんど知りませんでした。 『誘拐』は、元読売新聞の社会部記者であった今は亡き本田靖春…

『アウシュビッツの図書係(集英社)』:アントニオ・G・イトゥルベ

本のもつ可能性には限界も境界もない。 ずっとそう思っていたけれど、今回ほどその想いにぞっこんしたことはなかった。 アウシュヴィッツの図書係 作者: アントニオ・G・イトゥルベ,小原京子 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2016/07/05 メディア: 単行本 …

『クロコダイル路地(講談社文庫)』:皆川博子

はじめまして、ながれです。 お目通しいただきありがとうございます。 『地底人とりゅう』では私の読書本紹介をメインに投稿していきます。 本日は私が夏の冷房よりも渇望してやまない皆川博子先生の、『クロコダイル路地』をご紹介します。 クロコダイル路…